すえひろてい、らくび

今回GETした手ぬぐいと6人の会特製キ

伊勢丹の角からUFJ銀行の裏へ回っていくとあるのが新宿末広亭


ここの良いところは昼夜の入れ替えが無いのでその気になれば2700円で一日中落語を聴いていられるんだよね。
古い建物もそれなりの雰囲気があるし、桟敷席で畳に胡坐をかいて見るなんていうのも悪くない。
まぁ今回みたいな通常興行でない時は昼夜入れ替え制だけどね。


楽日だからそこそこ混んでいるだろうな…と思っていたら案の定の行列。
まだ入場が始まっていないというのもあるけど、まぁ座るのは無理そう。
それでも入れないという事は無さそうなのでそのまま列の最後尾に並ぶ事とする。


私の前にいたオバちゃん2人組。
どうやら地方から出て来たらしくお土産や荷物を両手に並んでいる。
並びはじめて10分も経った頃合。
片方のオバちゃんがふと「今日ってこんなに混んでるけど何があるのかね?」と言い出す。
するともう一人が「三枝さんが出るみたいだよ」と列整理の係員が持っていた「今日の上方出演者」という告知を指差した。
ひょっとしてこの人たち、今日が襲名興行だって知らないのかな?
そのまま二人が「他に誰が出るのかな…」なんて話をしているので「今日は九代目林家正蔵の襲名披露興行で、今日はここでの楽日」というような事を私が説明をすると「それで混んでいたのね」と二人とも納得していた。
聞きはしなかったけどこの二人、上京(?)する度にここへ見に来ているんだろうね。
私なぞは好きな人や知っている人が出てる時を狙って行くだけだけど、本当に好きな人は機会があればプラっと来るんだろうなとオバちゃん二人に少し感心。


17時を過ぎて入場開始。
残念ながら私の数人前で席が全部埋まってしまう。
元々立ち見のつもりで来ていたから、好きな場所に立てるというだけでも儲け物。
落語Blogを見てたら、どうやら最終的に2階まで立ち見がいたんだそうな。
2階を開放するだけでもあまり無いのに、やはりTV効果なのかな?


入場券売り場横の告知を見ると出演予定だった林家木久蔵三遊亭金馬に変更との事。
O(≧▽≦)O ワーイ♪
金馬さんだ〜♪
別に木久ちゃんが嫌いというのではないけど、金馬さんは久しぶりなので凄く嬉しい。
これだけでも来てよかったと思ったりする。


とは言っても前座さんの次…本興行の一番手は「林家きくお
木久ちゃんの息子さんなんだけどね(笑)


きくおの次がギター漫談のぺぺ桜井という人。
前にも何度か見た事あるんだけど、今回思った。
この人酔ってるよね?
酒飲んで高座にあがってるよね?


少々禿げ上がった頭のてっ辺までほんのり赤い顔で千鳥足ともなんとも言えない感じで出てきた。
襲名興行という事で気負っている出演者もいるだろうに、すげーよおっさん!
古き良き時代の芸人さんを見た感じに何故か嬉しくなる。
まぁやった内容はハーモニカを吹きながら歌うとかいう滅茶苦茶な(でも面白かったけどね)ものだったけど。


たい平ちゃんの漫談に続いていっ平ちゃんが袴を履いて講談調の装いで登場。
ネタは講談種の「荒茶の湯」(荒大名の茶の湯
戦国武将が初体験の茶席で起こす珍事がその筋なんだけど、元ネタが講談なのを意識しての喋りがあまり好感持てない感じ。
武将の荒々しさを表現するのも単にガサツなだけに聞こえなくも無い。
噛んでるところを勢いでごまかしたのも目立った。
張り切って元気良くやっているし、気負う気持ちもわかるのだがあまり今の彼には似合わない題目なのかもしれない。


高座の天井が低い寄席なので太神楽も座ってやらざる得ないのだが、そつなくこなす翁家勝丸


末広亭の時よりもかつ舌が良くなっている(笑)円蔵、至極無難な円歌、お仲入りに続いて襲名披露口上。
面白いんだけどどこかライトな感じが拭いきれない。
一人当たりの持ち時間が短いので自然とネタそのものが軽いものになってしまっているからなのかな?


襲名披露口上の後に出た小朝は昼の二人会でやった三枝のネタを意識したのか奥さんとの温泉旅行を考える旦那ネタ。
ソツが無く、昼同様に上手いんだけど、なんか下世話なネタが続いているような話だった。


三枝は「お忘れ物承り所」
こういうと失礼かもしれないが、やはり昼の部は二人とも手を抜いていた…というか流していたのかなと思いたくなるような出来。
面白いですよ。
確かに面白い。
でも、この面白さが昼の手抜(?)のお陰だとしたら少々寂しい話かな。
この時面白かったのが舞台袖。
扉の窓越で前座が高座の様子を見て、次の出演者の準備をするんだけど、三枝の時は入れ替わり立ち代り誰かが覗いていた。
昔に比べれば機会が多くなったとはいえ、上方落語の勉強をするいい機会だからね。
高座だけでは見えない前座のがんばりみたいな物をちょこっとだけ感じた。


金馬さんのネタは「四人癖」
落語では珍しく同場面に四人が存在するネタ(他にもあるのかな?)。
短めの話なんだけど四人の様子を動き(各人の癖)で表現するから簡単そうで実は稽古がちゃんと出来ていないとグダグダな話。
とはいうもののさすがは金馬さん。
その豊かな表情でそんな奴いるわけないだろうというくらいのオーバーアクションにリアリティを感じる。
見ているだけで物凄く幸せな時間。


トリ前の紙切り林家二楽
御挨拶がわりに…と桃太郎を軽く切ってみせる。
続いてお客様からのリクエスト…と言われて聞こえたのが年配の男性から「厳島神社」、私と同世代くらいの男性から「タイガー&ドラゴン
どちらもハァ?となってしまう題目。
しかし「紙切りは出来ませんって言っちゃったらダメなんです」と言いながら切り始める二楽。
自分でも「時間がかかってスイマセン」と苦笑しながら出来たのは単に海と鳥居なんて簡単な形ではなく、後ろの本田や鹿(しかも角まで細かく表現している!)が2匹くらいいるという大作。
海の上に鹿が立っている様な構図ではあるけど、そんなのは芸の前では無問題。


続いて「タイガー&ドラゴン
リクエストをした男性はしたり顔で「お前に切れるか?」といった雰囲気。
それに対する二楽の答えは…TVを見る虎と龍の姿。
しかもTVの画面に映るのは「&」の字(笑)
そりゃー話題のドラマなのかもしれないけど、主演の二人の顔を切っても芸が無いし、ドラマの内容だって始まってないからわかりゃしない。
よくある客の意地悪みたいなものなんだろうけど、上手く切り返した二楽に一本といったところかな。


大トリは九代目正蔵の「一文笛」
上方からのゲストを意識しての上方落語ネタ。
スリとその兄貴分の元スリとの会話で進む話はいっ平ちゃんの「荒茶」とは違ったアウトローの匂いがする話(あちらは荒々しくても一応は武将の話だしね)
とはいっても人情物なんだけど。
押し殺した声による話が進むのだが、その間客席は水を打ったように静かで全員が高座に引き付けられているのがわかる。


彼の襲名についてまだまだという人も、ストイックだった八代目と違いすぎる(そもそも師弟でもないんだから比較するのも変な話なんだけど)という人も少なくない。
TVでのイメージから「こぶ平が人情話?」という人も結構いるし。
また、今回の興行で「一文笛」をやる事に不満を感じている落語ファンが結構いるみたいです。
理由は襲名披露直前に開かれた「東西落語研鑽会」“さよならこぶ平”でかけたのも「一文笛」だからだそうなんだけど、誰もがそれを見に行ってるわけではないからね…。
かくいう私も行けなかった口だし。


襲名披露興行も20日やっている訳だし、出演者の疲労度や数回見に行った場合のネタ被りなんていうのも正直あるんだけどそれくらいは大目に見てやるくらいの技量があっても良いんじゃないかなと思ったりするんだけどな。