ほるもんどん

雲は大分初秋を感じさせるものがチラホラ見られるようになったが、まだまだ日差しは強く暑い。

築地近辺での打ち合わせを終えたのは昼を少し過ぎた頃。
日差しは強いが、せっかくなので少し歩いて築地場外で昼食をとることにする。

築地といえば魚。
当然寿司という話になってくるのだろうけど、築地にある飲食店はそれだけではない。
魚河岸で働いてるからといって、魚しか食べないなんて事はないからね。
結構普通になんでも食べる事ができるのだ。
もちろん、寿司屋の軒数が圧倒的に多いのも事実なんだけど。

場所は築地場外の外側、新大島通り沿い。
ここには広さが1〜2畳しかない小さいカウンターだけの店が何軒もひしめいている。
カウンターだけだと数席しか椅子が無いので、そこに座れない客は歩道に積んであるビールのケースやステンレスの台をテーブル代わりにして食べる。
あまり知られていないが、実はこれも築地のスタンダードスタイルだったりする。


ラーメン屋で有名な井上のちょっと先にその店はある。
店の名前はきつねや。
カウンター4席だけの小さな店。
店頭には大きなズンドウがあり、その中ではいつもグツグツとホルモンが煮込まれている。
閉店時間の13時まであまり時間がないせいか、カウンターには珍しく客がいない。
今までもそういうシチュエーションがあったのだが、私は1度としてカウンター席に座った事が無い。
なんかね、あそこに座るには資格が必要な気がしてならないんだよね…。
私の勝手な思い込みだとは思うけど(苦笑)


ホルモン丼を注文。
熱々のドンブリ飯に茶色く煮込まれたホルモンがドサっと盛られる。
その上に長ネギの輪切りがこれまたゴソっと乗せられ、昔小学校の給食の時に使ったようなアルミのお盆に麦茶入りのコップと共に出される。

通りにあるステンレスの台で立ち食い。
日差しとホルモンの熱さで汗が一層噴出してくる。


気のせいか今日のホルモンは若干味が濃い目の気がする。
暑い日だし、元々労働者の多いところだから若干塩を今日は強めにしているのか?


ハフハフ言いながら食べていると、私の前に初老の男性がホルモンの鉢とビールの小瓶を持って
やってきた。
服装や帽子を見たところ、おそらく築地の仲買人か何かだというのが一目でわかる。
昼からビール?なんて思うかもしれないけど、彼等にしてみれば夜明け前から仕事を始めて、ようやく仕事を終えて一息と言ったところなんだろうね。

手酌で注いだビールを一気に飲み干す男性。
こちらはまだ仕事があるので当然ビールなんぞを飲めるわけもなく、そうは言ってもこの暑さでは飲みたくなる衝動が無いというのも嘘。
あまりに美味そうに飲む男性を思わず見てたら、目があってしまった。
お互いちょっと照れ笑い。

続けて手酌で飲む男性。
なんだか、私は彼の仕事あがりでホッと一息入れた聖域を侵してしまった様な気分になってしまった。
ゴメンよ、おじさん…。
私はそのままドンブリをかきこむと、手酌でチビチビ飲み始めた人生の先輩をあとにした。


今度は仕事をサボって、私もあのホルモンで一杯やりたいなぁ(笑)