ほじょけん

シンシアと飼い主さん

補助犬介助犬盲導犬聴導犬を総称してそう呼ぶみたいです
昔は盲導犬しかいなかったし、それも決して多い数ではなかったからあまり馴染みが無い言葉なんだけど


その補助犬のシンボル的存在で、身体障害者補助犬法の制定に大きな役割を果たしたラブラドルレトリバーのシンシアという犬が死んだそうです
雌で12歳だったとか


補助犬としての仕事は昨年末に引退していたのですが、今年の1月に腫瘍が見つかり手術をしたんだそうです
私が見たニュースには詳しい死因が書いてなかったのですが、おそらくその腫瘍が関係しているのは間違いないでしょう


昔…といっても7〜8年くらい前かなぁ
当時既に社会人だった私は毎朝混雑する中央線にゆられて通勤をしていました
その人はいつも私が乗る時、シルバーシートのドアに近い側に座ってました
横にラブラドルレトリバーを従えて
そう、その人は目が不自由な方だったんです
その人は確か武蔵小金井あたりの駅で降りてたんじゃないかなぁ


いつも混んでいる電車なのですが、その日は人身事故か何かでいつも以上に混在をしており、いつも座っているその人もその日は座れずに立っていました
当然、犬もその横に
当時知らなかったのですが、盲導犬とかって飼い主(パートナーっていうのかな?)がOKを出さない限り座らないんだそうですね
その日は飼い主さんもいつもと違う勝手に戸惑っていたのか、それとも立たざる得なかった自分の不安定さを守るためなのか犬は座らずに寄り添うように立っていました


西国分寺の駅だったかなぁ
乗換えの人がたくさん乗ってきてギュウギュウになったところで電車が急ブレーキをかけたのですが、その時、誰かが犬の足を踏んでしまったみたいなんです
さすがに驚いてビクンと身体を一瞬硬直させたものの、一声もあげずに何事もなかったかのように犬は振舞っていました
リードを通じて犬の異変に気づいたのか、飼い主が犬になにやら話しかけているのですが、犬は何事も無かったかのような態度を取り、そのままその人達はいつもの駅で降りていきました


たまたまその一部始終を見てしまったんですけどね…
満員電車で足を踏まれるとか人とぶつかるなんていうのはお互い様な話だし、仕方が無い事だと思うんです
でも踏まれたりぶつかったりした瞬間に声を出さないっていうのはなかなか出来ないでしょ?
それが普通の人間なんだと思うんですよ
でもあの犬は驚いて一瞬硬直をしたものの、声は出さなかった


なんだか上手く言えないけど、パートナーに余計な心配をかけない配慮というか、訓練の賜物というか、鉄の意志というか…
胸に熱いものを感じ、生まれて初めて人間以外のものを尊敬しましたよ


その後、私は転勤をしたので彼等の事はその後数回見かけただけで今はどうしているか知りません
犬の方はさすがに亡くなっているかも…


その後、盲導犬協会なるものの存在を知り、毎年わずかではありますが寄付とかをさせてもらっています
自分がやってきた悪行への免罪符を買うようなもんなんですけどね(苦笑)

犬の寿命は長くて18〜20歳くらいだそうなのですが、今は医療や餌の改良が進んでいるので15歳くらいまでは結構生きる犬が増えているんだそうです
そんな中で12歳というのは犬としては老犬の入口に入ったとはいえ、やはり早い生涯だったとしかいいようがありませんし、その短命の理由が補助犬として生きて来た事と無関係だとは思えません
でも、満足だったんじゃないかな…シンシアは


己の欲望を抑え、時には苦痛にすら耐えて人の目となり、耳となり、手足となる生き方
例えそれが犬だったとしてもその生き方を考えた時、言葉は何も出ないですね


人間のクセにさ、なんだか生きる目標が無いとか言ってる人がいるじゃない?
目標はあるけどその達成方法がわからないっていうのならば、まだ話はわかるけど
短命だったけどしっかり生ききったシンシアの事を思うとそういう目的も目標も夢も無いっていう生き方がかわいそうになってきますね
私もそういうかわいそうな生き方にならないようにしたいと思います