ぎゅうにゅうらーめん

意外な拾いものでした♪

新高円寺近辺での仕事が終わり、時間も19時近かったのでそのまま会社に戻らず帰宅する事とする。


JR高円寺駅に向かってトボトボとルック商店街を歩く。
JR駅から少し離れたこの昔ながらの商店街は街灯も無いのでどこか薄暗い。
時間も時間だし、雨が降り始めたのがまたうらびれた雰囲気に拍車をかける。


なんとなく小腹も空いてきたので早めの晩飯でも食べようかと考え、このまま駅まで行く道の途中に「とん吉」がある事を思い出す。
名前の通りとんかつ専門店なのだが、そのボリュームと箸でも切れる柔らかい肉で雑誌やTVでも何度か紹介されている名店だ。
普段だったらそこそこ良い値段がするので敬遠してしまうのだが、毎週水曜日と木曜日は半額Dayなんだよね♪
これはガッツリ食ってやろうと勢い勇んで店に行くと…満席(泣)

食事時だし、なにより半額Dayということもあって狭い店内は既に満員。
幸いにも外で並ぶなんて事はないけど、小雨も降って来ているし今回はあきらめるかなと気落ちしていたところ、店の前の路地を2軒ばかり入ったところにある店の黄色い看板が目に付いた。


「牛乳ラーメン」


(; ̄ー ̄)...ン?
牛乳ラーメン?


一瞬どんなものか想像がつかない。
わざわざ看板にしているくらいなんだから単純に牛乳の中に麺が浮かんでいるだけの芸が無い代物ではないはず。
気がつくと私はフラフラとその店の前に来ていた。


ラーメン屋にしては珍しい店構え。
どちらかといえば一昔前のカウンターだけの喫茶店といった感じ。
おそらく前はそうだったのをそのままラーメン屋にしただけなのかもしれない。


店に入るとネズミ男みたいな顔のオヤジが愛想良く笑って迎えてくれた。
客は私一人。
店の中は白い壁で非常に綺麗。
それなりに古い店なのだろうけど、掃除が行き届いているのかラーメン屋特有のベタついた感じが全くしない。
壁には手書きのメニューが一面に貼ってある。
定食」「ラーメン」とジャンルが書かれた紙の下にズラリと並んだメニューの一番右にそれはあった。


「牛乳・チャーハン」


この2つが並ぶという理由がよくわからないが、チャーハン、激辛チャーハンといったどこ
の店にもありがちなメニューの下に「牛乳ラーメン」「牛乳味噌ラーメン」といった牛乳系メニューが並んでいる。
どうやら「冷やし」メニューもあるみたいなのだが、ここはノーマルな牛乳ラーメンを注文する事とする。


カウンターだけの店のオヤジの手元が見やすい席に座り、どんな風に作るのかを観察。
この店にはラーメン屋に必ずあるズンドウが無い。
どうやって作るのかと思っていると冷蔵庫から出してきた麺を計り、それを湯をはった中華なべに入れてほぐしていた。
そもそも最初に見たメニューがラーメンだったのでラーメン屋という先入観で入ってしまったのだが、その他のメニューを見るにこの店は中華系定食屋という方が正しいのかもしれない。


麺をほぐすかたわら、オヤジは冷蔵庫から出してきた農協牛乳のパックから大き目のおたま一杯の牛乳を別の中華鍋にあける。
続いておたま半分くらいのスープらしきものを鍋に入れ、手際よく混ぜ合わせている。
時折、麺の鍋の方へ行き湯で加減を確認しているのだが、箸であげた麺をこねくりまわしてそのまま鍋にもどすんだよね。
再度ゆでるのだとわかっていてもあまりいい気はしない。


出来上がった牛乳スープをドンブリにあけるとゆで上がった麺を入れ、刻みネギとメンマ、ナルトにチャーシューそして何故かウズラの卵を乗せて牛乳ラーメンの完成♪(画像)


スープを混ぜたためかほんのり茶色く色づいた白濁スープ。
牛乳を煮立てた時のクセがある匂い等はしないし、タンパクの膜も無い。
少し泡立っている感じだが、気にする程の事は無い。


まずはレンゲでスープを一口。


(・−・)・・・ん?
なんか普通だなぁ。
牛乳のクセも思ったほど無く、少なくとも不味くは無い。


麺を食べてみる。
こだわりのラーメン屋とかが製麺所で打った…なんてものじゃなくて、問屋が普通に持ってきたような麺。
正直安めのゆでると透けちゃう様な麺。
別に悪くは無いのだが、どうもスープの強さに負けてしまっている気がする。


無言で黙々と食べていると近所に住んでいる雰囲気の20歳前後と思わしきカップルが入ってきた。
彼女の方はメニューをザッと見て激辛チャーハンを注文。
彼も定食を頼むのだが、オヤジがとりかかろうとした瞬間に注文を取り下げ。
ちょっと待っててとメニュー再考に入る。


ごゆっくりどうぞと笑いながらチャーハンにとりかかるオヤジ。
(; ̄ー ̄)...ン?
それはさっき牛乳スープを作っていたのと同じ鍋ですよね?
当然調理にかかる前に湯でザッと流しているみたいだが、どうも不安でならない。
まぁ小さな個人の店だから当然の事なんだけど、もし激辛チャーハンの後に牛乳ラーメンを作ったら味が違うのかな?なんて思ってみたりして。


チャーハン作成が佳境に入ったのにまだメニューで悩んでいる彼。
そりゃ何十種もあるから悩むのもわかるけど、いくらなんでも悩みすぎ(苦笑)
彼がしょうが焼き定食を頼むのと少し焦げ目のあるチャーハンが出来上がったのがほぼ同時。


私は麺を食べ尽くし、レンゲでチマチマ飲むのもかったるいので一気にスープを飲もうとドンブリを手に持った。


(・_・o)ン?
(o・_・)ン?
(o・_・o)ン?

あれ?
なんか美味くない、このスープ。
先程まであまり感じなかったのだが、鶏がらスープと牛乳が程よく混ざってなんとも言えない味になっている。
好みの問題なのかもしれないが、どうやら出された時はスープの混ぜが少し足りなかったみたいだ。


やばいよ、美味いよこのスープ!
ラーメンのスープはわざと残すようにしている私だが、気がつくと全部飲み干してしまっていた。


ドンブリ越しにオヤジを見ているとチャーハンを作った鍋で豚コマをしょうが焼きに調理している。
肉が焼けるまでの間、皿に刻みキャベツとかを盛るのだがこれがまた大盛。
並びにあるとん吉のそれに負けないくらいの量だ。
それに大き目のトマトを一切れと厚めに切ったキュウリを乗せ、皿半分が埋まってしまうくらいのしょうが焼きを乗せて完成。
ご飯は中くらいのドンブリ一杯。
これがまた美味そうだ。
メニューを見ると680円(650だったかも)
この値段でこの量はかなりお得なのではという感じ。


ちなみに牛乳ラーメンは550円也。


ここでウズラの卵についてはたと思いつく。
ここ高円寺は昔から学生が多かったためか安くて量が多くてなおかつ美味い店がたくさんあった。
無論、今でもそういう店がたくさんあるのだけど。


普通に鶏卵をラーメンに入れると原価や手間の問題で数十円は最低でも値上げなければならない。
それを抑える為に缶詰のウズラの卵を使っているのではないだろうか。
要はあの卵はオヤジの心意気みたいなものなのかもしれない。
勘定を済ませ、勝手にそんな解釈をした私は店を出た。


わざわざ食べに行くだけの味かと聞かれれば、微妙としか言えない。
でも、美味かった。
他にも味噌とかあったし、ひょっとして味噌のコクだったらもっと美味かったかもしれない。
あるいは麺がもう少ししっかりしているものだったらまた違うものになるかもしれない。


また寄り道してみようかな…。
今度は「冷やし」をチャレンジするために(笑)