しょかのたべもの3ぼんしょうぶ 1しょくめ

これにビールがあれば、マジ最強♪

梅雨というのに暑い日が続く。
昼食を食べようにもこの暑さでは少々食欲も落ちるというもの。
普段だったら冷やし中華でも…と思うのだが、近所にはまだ冷やし中華をやっている店があまりない。
元々多くはないのだが、おそらく7月に入ってからと準備でもしているのだろう。


かといってコンビニの冷やし中華は究極に不味いから食べたくない。
(特に今シーズンのは酷いね)


暑い中、あまり出歩きたくないのだが先日通りがかりに見つけたポスターが気になり、その店に行ってみた。


いわて銀河プラザ


歌舞伎座のほぼ真正面にあるそれは、いわての食品や工芸品、観光情報からUターン情報まで取り扱っているいわば岩手県のアンテナショップみたいなところ。
銀座にはこの他にも北海道から沖縄までの各都道府県がいくつもこういう店を出している。
で、見つけちゃったのですよ。
「試食 盛岡冷麺」というポスターを!


地方食材というのは見ていて参考になる事も多いので、時々覗いていたから盛岡冷麺の麺を売っていたのは知っていたけど、試食(といっても有料だけど)出来るような場所があったなんて知らなかった。


入り口に、食券をレジで購入する事と試食サービスをしているのが6/30までというのがあった。
そっか〜期間限定なのね。


レジで食券750円を購入。
いかにもコピー用紙を適当な大きさに切って手書きしたという感じが良い。


そして試食スペースの方に案内されると…


店内の隅っこ、柱とパーテーションの影にダンボールが積まれた横に6人掛け長テーブルが2つしかない。
店内と仕切りは全く無く、座っていると店内の客が何事だろうとジロジロ見てくる始末。
私より先に座っていた年配のオッサンもなんだか居心地悪そうにキョドっている。


なんとなく失敗した感じが漂う。
どう考えたってこんなとこに調理スペースなんぞあるとは思えないし、給湯室で湯がいた麺と軽い具が出て終わりなんじゃないかな。


10分ほど待っただろうか。
ようやく先に待っていたオッサンのが届く。
席が離れているので内容はわからないが、やはり店員が片手間に作っているので出来上がりが遅いというところみたいだ。


オッサンのところに来てからしばらく待ってようやく来た。
麺の入った器とキムチの入った器が別々になっている。
これはポイント1。


結構、最初からキムチを入れて出す店が多いんだよね。
でもそれだと最初のスープの味がわからないし、辛さを調節するのも難しい。
確かに待たされたけど、こういうちょっとした配慮がすごく嬉しい。


冷麺にしては少し黄みがかった麺に少し色のついたスープ。
韓国のそれとはやはり違う。


具はキュウリを刻んだ浅漬風のものと半玉にリンゴ。
肉はハムかチャーシューかと思いきや、茶色く見慣れないものが入っている。
一見して肉である事は判別できるのだが…。


まずはそこで麺を一口。
盛岡冷麺特有の腰がある…といえば聞こえがいいが、要はゴムの様に弾力があって噛み切れない独特の食感がしっかりとある。
結構美味い。


スープも出汁がしっかりとれている割にあっさりとした後味で良い。


キュウリは少し酸味がききすぎて、キムチの辛さとバランスが少々あってない気がするけど、単品で見れば悪い味じゃない。


驚いたのがリンゴ。
昼時から少し外れた時間だったので、昼に残ったリンゴを変色しないように塩水に漬けたのが出るだろうと思ったのだが、どうやらそういう感じではない。
まさかこの為だけにリンゴを新しく剥いたの?
だとすれば凄いロスだ。
まぁ県産物のアンテナショップで、プロモーション的役割がある店だからというのも多少あるだろうし、実は塩水漬けなのに私が勘違いしているだけなのかもしれないけど。


別皿のキムチは白菜と大根を漬けた少々辛めのもの。
大根がカクテキによくあるダイス状ではなく、タクアンの様に扇形に切られているのは御愛嬌というものだろう。
キムチだけを先に一口食べてみたが、熟成して乳酸発酵した酸味のあるタイプではなくスープに入れて食べるというのを意識した若干辛めの味付けになっている。
少し漬け汁が多めに入ったキムチを麺にあけて混ぜる。


それらの具と麺を適当に楽しんだ私は、遂にあの茶色い物体へと箸を伸ばした。
盛岡…仙台というあたりからタンかな?とも最初思ったのだが、どう見てもタンの形状はしていない。


あまり大きくない塊を口の中に入れる。


煮込まれて柔らかくなった肉から旨みが口の中に広がる。


美味い!


これは美味いぞ!
肉の大和煮に似た味付けのその肉だけであれば濃いのだが、他の食材が全体的に薄めの味付けなのでアクセントとして際立っている。


食感からもタンでは無い事を確認。
食感や味の感じからするとテイル(尻尾)の様な感じなのだが…。


同じ冷麺でも韓国のそれとはやはり違うなぁと結局、あっという間に完食。
味には満足だが、量的にもう少し食べたい感じ。
それよりもあの茶色いものが凄く気になる…。


すると後ろから声をかけられた。
振り返ると前掛けをしたオヤジが立っている。
どうやらこのコーナーの担当者の様だ。


冷麺の写メ(日記用にね)を撮ったり、食材の味を一つ一つ確かめながら食べる私の姿に何かを思ったのかもしれない。


「この麺はですね…ジャガイモのでん粉で作ってるんですよ…」と麺の説明をするオヤジ。
折角なのでしばらく付き合う事にしたが、一向に麺以外の食材の話にならない。
販売コーナーへ案内されるとたくさんある冷麺(10種以上はあったかな)の中から
2つを選び、「さっき食べてもらったのはこれで、他にはこれがお勧め」と言ってくる。いずれ買いに来るだろうから銘柄だけは頭に叩き込んでおく事にする。


麺の袋を手に取った私を見て、軽く会釈して立ち去ろうとするオヤジに私は思わず声をかけた。
「あの…具に入っていたあの茶色いのは…」


「ああ、あれは牛のすね肉ですよ」とオヤジ。


なるほど、牛のすね肉か!
それならばあのテイルに近い食感と味の理由も合点がいく。


「盛岡では牛のすね肉をいれるのが結構多いんですよ」とこれまた初耳の情報をくれるオヤジに「ここではあれを売ってないのですか?」と再度質問。


するとオヤジは(あんなの欲しいの?)とでもいうような少し不思議そうな顔つきで「あんなのどうするの?」と聞いてきた。
「いや〜あんまり美味いんで、酒の肴にでもしようかなと思って」と結構マジ回答をしてしまう私。


するとオヤジは「置いてないんですよ…あれは全然売れないんでね…」と答えた。
「売れないんですか?」と聞き返す私。
「何度かやってみたんだけど、全然売れないからやめちゃったんですよ」というとオヤジは頭を下げて店の奥へ消えていった。
やはり世の中ってやつは味が良くても「すじ肉」ってだけでランク下の下賎な食べ物とでも思ってる輩が多いのかなと少々寂しくなる。


せっかくだからオヤジお勧めの冷麺でも買っていこうかと思ったが、興が冷めてしまったのでとりあえず次回にする事とする。


冷房の効いた店からアスファルトが焼け付く外へ出る。
この次また今日の様な美味い冷麺が食えるのはいつになるかな…。